甲骨文や金文の時代は筆で文字が書かれていたのです。安東麟の使命は、書くという視点から、古代の書記者に寄り添って、眺めることであります。ここでは、天来書院の金文を使って理解を深めようと思っています。

これまでは、秦の始皇帝が文字統一を果たした時代以前の先秦（せんしん）の文字は、定型化する前の文字として、古代の文字にルール（型）などまだ作られていなかったとして、書道研究は深くされてこなかったという印象があります。
それで、自由に書いて良いという風潮になっていったのです。
書道を愛好する方々が、甲骨文と聞くと、自由に飛び回るように書いて良いと直感的に思うのは、これまで書道の先生方が書き記してきた著書に影響を受けていると思われます。「古代にはまだ書き順などありません。甲骨文は彫られているものです。自由に書いてかまいません」このような言葉があったら、真に受けるのは当たり前です。
彫られているものに、書き順はない。
書道の先生たちも、そう思っていたのです。2023年の今でもそう思っている方がいるかもしれません。
しかし、この動画でも再三申し上げているように、殷代の甲骨文は、筆で書かれた文字を彫ったものです。
つまり、古代の書記者は、筆を持ち、文字は書かれるものでありました。
甲骨文や青銅器の文字である西周金文から、手に関係する文字を探求しますと、右手の字形が多数を占めています。そこから、筆も、右手で持たれていたと想定することが出来ると思われます。それならば、今と同じく、右手で古代の書記者は筆を持って、文字を書いていたのです。
例えば、縦画。筆を持ったら、縦画はどう書きますか。
上から下に書いていきますよね。
古代人もそのように書いたと考えるのが妥当でありましょう。
横画も同様、右手で筆を持ったならば、筆を押すよりも、引いていく方が書きやすいので、左から右に引くように書かれたと想定できます。
斜め画も、上から下に書かれていた。
左右対称になるように書くならば、中央の長い画から順に書いていったと想定するならば、書く順番、書かれた順番が、残された文字の形から、想像できるのではないでしょうか。
文字は、雑に取り扱うと、決して見えません。
丁寧に眺めていくことで、バラエティー豊富な字形たちに、ある共通点も見いだすことが出来るのです。
そこで、安東麟は、繋がり合う漢字たちと題して、古代文字にある型（かた）を導き出そうとしております。
古代文字の可視化（みえる化）です。
これまでの書道の先生たちが知りたくても知り得なかった古代文字の魅力を、可視化してお見せしようと思っているのです。
この志（こころざし）で、終生突き進みます。
よろしくお願いします。古代文字書家安東麟（あんどうりん）
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